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梅々

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ハロウィン

辰馬が出ましたね……´`
陸奥素敵でした流石陸奥。あと銀さんが煌めいて見えました。気のせいだよね。

我が家初のハロウィンやりました。お菓子を妹にあげただけだけど。喜んでいたのでよかった!やっぱりお菓子いいですよね!クッキーおいしい。




拍手ありがとうございます!





それではハロウィンネタ!
長編の起みたいな感じなのがなんともいえない……。沖田がまじょっこです。
一応お別れのシーンは考えてあります。でも続かない!















「トロッコ・オア・エリート!」
「多分それトリック・オア・トリートだと思う」
「マジでか。しくじりやした」
「……それ以前にお前、誰だ」

 段ボールを開けるなり飛び出してきた人間に、驚きすぎて冷静に突っ込んでから素朴な疑問を投げ掛けた。
 するときょとんと真ん丸い目を向けられる。まるで知らないことがおかしいような反応に、様々な知り合いの顔を思い浮かべるが誰にも当てはまらない。一度見たら忘れはしなさそうな顔をしているのだけど。
 眉を寄せつつ僅かに首を傾げると、目の前の不審者はにんまりと笑った。





ひみつのまほう





 大学へ入ると同時に借り始めた学生寮の一室に帰ると、玄関の上がり口にでかい段ボールが置いてあった。独り暮らし用の冷蔵庫がすっぽり入りそうなそれは大家が入れておいてくれたのだろう。いつも郵便物は玄関前に置いてあるのだが、この大きさでは廊下を通り辛いというかはっきり言って通れない。現に侵入を阻むように置いてあり、乗り越えない限りは靴を脱いでも上がれない。中身は何だろうと伝票を見ると母親からで、中身はなまものとしか書いてなかった。米だったら乗り越えられるが柔らかいものが詰まっていたらと思うとそれもできない。一先ず確認するかと引っ越し時から玄関先に常備してあるカッターを取り出した。
 そして開けたら人間が出てきたのだった。間違ったハロウィンの代名詞と共に。
 黒いマントに、黒いワンピース。箱の中から尖った黒い帽子を取り出し被った格好は魔女のコスプレにしか見えない。格好が真っ黒いからか元からか、この不審者は色白に見える。肌の色も白く髪の色も柔らかそうなミルクティーの色だ。よく見れば整った顔をしている。
 新型のビックリ箱でこれはただ機械仕掛けなだけでは、と思ったがそんな妄想に近い想像は即座に否定される。普通に会話して普通に帽子を被っていた。いくら技術が進歩しているとはいえ、こんなに滑らかに動き会話をするロボットはまだ作れないだろう。
 ならば人間か。母親の送って寄越した。

「俺のこと聞いてやせんか?」
「微塵も」
「あらら。初めやして、沖田総悟でさァ」
「土方十四郎だ」

 奇抜な格好だが、礼儀正しいようではある。ぺこりと頭を下げてから此方を見た沖田総悟という恐らく俺より年下の不審者は、言葉を選ぶような間を取ってからにやりと口角を上げた。面に似合わない可愛いげのない笑みだ。
 そこではたと気付いた。沖田総悟はジ○リにでも出てきそうな魔女の格好をしているが、声は女にしては低く一人称も俺であった。つまりは同性。ならば何故こんな奇っ怪な格好をしているのか。ただでさえ不審なのに拍車をかけている。当人に自覚はなさそうだが。

「話せば長くなるんですが、簡単に言えばアンタの手伝いに来やした」
「悪い、分からないからもう少し詳しく言ってくれ」
「烏と喧嘩してるとこをアンタの母上が停めてくれやしてね、そのまま飯と寝床を世話してくれやして。独り暮らししてる息子が心配だっつってたから一宿一飯の礼をしようと」

 烏と喧嘩って不審者どころか危ないやつじゃねぇか、何そんなやつを家にあげてるんだと溜め息をつく。だが、今時こんな風に礼を尽くす人間も珍しい。鶴の恩返しを思い出した。もしかして人ではなかったりするのでは、と冗談半分に思うが、見たところ何もできなさそうな年下の人間だ。怪しすぎるが、心意気だけは有り難く頂戴しよう。越してきてから数ヵ月は経ったが家に誰かを招くようなことはなくて、騒々しい実家とのギャップにほんの少しだけ寂しく思っていたのも事実だ。
 今日はもう時間も時間で体育があったりと疲れているから、泊めてやり明日にでも帰るよう促せばいい。それ以前に彼は大丈夫なのか、家族が心配してはいないのか。

「とりあえず上がらせてくれ」
「あ、へい」

 よいしょ、と縁を跨ぎ段ボールから出て、今まで入っていたそれを潰し始める。そのスカートのたけは膝上と清楚ではあるが、そこからすらりと伸びる真っ白い二本の足が寒々しい。今日はまだ温かい方ではあるが、日が落ち段々と温度も下がってきた。
 素足で寒くないのかと目を向けていると、その視線を勘違いしたのか助平とスカートの端を伸ばして足を隠すような仕草をした。生憎俺に少年趣味はない。濡れ衣に眉を寄せると沖田総悟は楽しそうに口角を上げる。

「で? 恩返しって例えば何すんだ?」
「そうですねィ、アンタを幸せにするのが最終目標なんでとりあえずちまいことからしていこうと」
「幸せにって、すげぇ目標だな」

 廊下兼台所を通り部屋に入り電気を付ける。ソファーベッドとテーブルにパソコン、あとは箪笥だとかしかない我ながら殺風景な部屋。パソコンさえあれば音楽も聞けテレビも見られるしと文明の利器に頼ったわけだが、こうしてみるとやっぱりテレビがあったほうが生活感がある。
 適当に座れと促してから荷物を置き、コーヒーを入れに台所へ戻る。するとぺたぺたと後ろからついてきた。振り向けば上目使いに俺を見ている赤い瞳。
 赤?
 そんな色非現実的だとまじまじと見る。だが色が変わったりするわけでもなく、瞬きする度にきらきらと星が散りそうな瞳はコンタクトだとかに頼っているようには見えない。偽物にしては鮮やかに澄んでいる。

「土方さん」
「ん?」
「俺、魔法使いなんでさァ」
「はぁ?」

 格好から言い出しそうな冗談ではあるが突拍子もない。だけど烏と喧嘩するぐらいだからいつ何を言い出してもおかしくないかと思い直し、流すことにする。この手の冗談は相手にするといけないのだ。母が冗談をよく言う人間だったからよく分かる。
 もしかしたら烏と喧嘩したというのも嘘なのかもしれない、改めて考えると何もかもが胡散臭い。

「信じてねぇんだろィ。母上はすぐ信じてくれやしたぜ」
「俺とあの人は違う」
「アンタは可愛くない性格ってことでしょう。仕方ないなぁ」

 ふぅ、と溜め息をつき、面倒臭そうに彼はポケットから木でできた杖を取り出した。持ち手の部分には水晶か、透明な玉がついている。それを、ゆらりゆらりと振ってみせた。
 粉を入れただけのマグ二つに向けて、指揮者がタクトを操るような優雅な動きで杖の先が弧を描いた。それと同時に。
 ぽむ、と音がして瞬く間にマグにはコーヒーとココアが注がれていた。

「ね、魔法使えるだろィ?」
「……いやいや、いやいやいや」
「まだ信じねぇんですかィ?」

 そんなこと言われても。
 確かに俺は二つのマグにインスタントコーヒーの粉を入れた。それが一瞬の内にお湯は注がれて片方ココアになってと、魔法をかけられたのだと言われて頷かざるを得ない状況だ。だがそんなメルヘンチックなことを信じられるはずがない。今まで十九年間そんな摩訶不思議とは無関係だったのだ。俺の頭が許容できるはずがない。
 ぶんぶんと頭を振ると、彼は困ったように眉を寄せた。

「俺はこれでも魔法の国の王族なんですがねィ、如何せん餓鬼だから魔力が足らなくて。アンタがくれたらもっとちゃんとした魔法使えるんですけど」
「くれたらって、何を?」
「甘いもん」
「……菓子か」
「精気でさ」

 はい? と頭が固まる。そんな俺に躊躇いがちに顔が近づき、目の前まで顔が迫って、触れた。唇同士が触れた。
 その間ずっと真っ赤な瞳が俺を居続けて、メデューサに睨まれたかのように動けなかった。間近で見ると吸い込まれそうな透明感。

「ん、よし、見てなせェ」

 ぺろり、唇を舐めてから彼は廊下のスペースに杖を振るった。ぼむ、と今度は大きな音がし、山積みにされた米の袋が現れた。30kg分ぐらいあるだろう、独り暮らしだから当分は買わずにすむ。
 魔法か。如何様にしては種が分からず、ボールを取ってきた犬のように誇らしげな顔をする沖田総悟が俺をからかっているようにはとうしても見えない。

「信じやしたか?」
「まぁまぁ」
「まぁだ信じないんですかィ」

 マグを手に取りココアをちびちびと飲み出す。飲みながらもきっと睨みつけられ居心地の悪さにリビングへ戻るとぺたぺたとついてきて、向かいにちょこんと座る。
 魔法使いである、ということを前提に考えれば今までの言動におかしなところはなくて、普通の少年なのだ。だが。前提が飲み込めない。でも、普通の人間を段ボールで送るようなことを、流石に母はしないだろうとも思う。六割は、このまじょっこの話を信用している。

「一人の人を幸せにしたら合格なんでさ。アンタを幸せにしたら恩も返せるし一人前にもなれるし、暫く傍にいさせてくだせェ」

 杖をふるりと揺らすと、テーブルの上にこんもりとマヨネーズが並んだ。一番手前のマヨには「仕送りです」と書かれたメモが貼ってある。
 袖の下か。それにつられるのはどうだろうとも思うけれど、きらめくマヨに罪はない。

「……分かった」
「やった! ありがとうございやす!」

ぺこり、再度頭を下げた自称魔法使いはにんまりと笑った。

拍手[3回]

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