梅々
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ドラマチックな恋愛
一昨日、ミツバ編読み返しました。あの久々に姉上に会えて凄い喜んでいる総悟が可哀想に想えてなりません。
それに、あんなに優しくて聖母のような人が何で悪い奴らよか先に死んでしまうのだろう。世の中解せない事ばかりだ。
それでは、昨日表にもアップした百人一首。
それに、あんなに優しくて聖母のような人が何で悪い奴らよか先に死んでしまうのだろう。世の中解せない事ばかりだ。
それでは、昨日表にもアップした百人一首。
おほけなく うき世の民に おほふかな
わがたつ杣に 墨染の袖
光の部屋
その部屋は、真っ白い。
ここまで白い部屋や物を見たことがない、と沖田は思った。
窓や壁、床、天井も、この巨大な立方体は純白だ。そこにある、調度品の数々も、真っ白い。ソファにタンス、鏡台にテーブル。何処で買ったんだろう、そんな馬鹿馬鹿しいことを考えてみるがそこまで真面目に考えていないから、答えも何も出ず、常にその疑問が頭から消えない。
まぁ、それでも生活に差し支え無いから気にしないのだけど。
この部屋の中で唯一異質な“モノ”がある事に気付いたのは何時のことだっただろう。気付けばいつの間にかいるこの部屋、純白を汚すように“俺”がいる。
床と壁の境界も、部屋の広ささえも分からないその中、何故か俺は、暗黒色の隊服を身に纏い居るのだ。
音の無い、牢獄のような此処に。
頭が痛い。鐘が鳴っているような音が頭の中響き続けている。
此所に居る時だけ起こるこの頭痛は何か責めているようで、気がめいる。だから出ようとしても闔は内側から開かないようにか、凹凸も何もなくまっ平で、窓も高い位置にある上小さい。
ずっと、この場にいなければならないのか。成す術も無く途方に暮れていると大抵、このドアは開かれるのだ。その向こうにはいつも、闇を背負い立つ、同じ隊服を着た鬼がいる。
見張りなのか、救いの手なのか、分からない。
「総悟」
それでも名前を呼ばれれば、反射でなのか、それともそれ程迄に逃げ出したいのか、とにかくこの体は反応し、胸に解放感を抱き、差し込む闇へと歩き出す。
「頭痛いんでさァ」
「・・・気の持ちようで治るだろ」
そうだろうか、疑問に思いつつも自分に暗示を掛けるように痛くない、痛くないと心の中で数度呟くと、嘘のように痛みが引いた。
凄い。もしかして超能力者だったりしちまうのか。
話し掛けようと、爪先を見ていた視線を上げると其処には。
(姉・・・上・・・・・・?)
手の甲で目を擦るが其処にいる人物は変わらない。
黒い隊服は白い着物に、果ての無さそうな闇は再び元の真っ白な部屋へと、全てが白色に戻っていた。
けれどこれは幻だ。
姉上はもういない。
「そうちゃん・・・」
「─────姉上」
笑いかけるわけでもなく責めるわけでもなく、ただ見守るようにそこに立っている。
何か、言って欲しい。
怒っていても、悲しんでいるとしても、もっと声を聞かせて欲しい。
けれど、いくら待っても佇んだ儘で。
「赦してくだせェ・・・姉上」
俺さえいなければ。
姉上はもっと幸せになれたんじゃないだろうか。子どもで我儘しか言えなくて、姉上を独り占めしようと躍起になって、俺は自分の事しか考えられなかったから。
こんなにも、大切な人なのに。自分の幸せしか考えて無かった。姉上は俺が守るんだって、馬鹿みたいに思って。
─────姉上は優しい人だから、俺を責めたりしないってわかってる。
それでも戒めのように、俺の中、姉上は在り続ける。
いつまでも。
「総悟」
聞こえた声に重い瞼を開けると、薄日を背に微笑む近藤さんが其処にいた。
今度こそ、本物の。
「・・・近藤さん」
寝ている間に日向になっていたらしく、ポカポカと暖かい。まだ頭がぼーっとしていて、転がった儘でいると頭を大きな手で撫でられた。
久し振りにそんな風にされて、胸がなんだか擽ったくなった。照れ隠しに、子ども扱いしねぇでくだせぇと呟くと、少し痛いぐらい力が込められた。
「うなされてたぞ。・・・障子でも破いちまったのか? すげぇ謝ってたなァ」
「・・・違いやすぜ。姉上の七味使いきっちまっただけでさァ」
本当はそんなんじゃないけれど。
・・・馬鹿馬鹿しくて、言えない。夢の内容なんて。あれは妄想の産物で、本物の姉上じゃないからこそ尚の事。
「そういやトシの事も呼んでたな・・・。出張行っちまってからもう一週間経ったし、寂しいんだろ? 総悟」
「・・・別にあんな人いないほうが快適でいいでさァ。寂しい、なんざ全然・・・」
心の底からそう思っているのに、疑うように険しい顔をし、近藤さんは頭を撫でていた手を止めた。それを機に、上体を起こし目を擦る。
大分寝ていたらしく、寝る前に山崎が煎れてくれた茶がきんきんに冷えていた。
「総悟、来い」
「・・・へ?」
顔を上げると近藤さんが笑顔で両手を広げていた。そのままぎゅっと抱き締められる。
ちょっと・・・。俺はもう子どもじゃないんですけど。
「近藤さん、俺もう餓鬼じゃねぇんですけど」
「そんな事知ってるに決まってるだろ? お前は俺より強いし、頼りになるヤツだ。・・・だからこそ、たまには肩の力抜けよ」
別にそんな気張ってるわけじゃない。そんな面倒な事年中してるようなキャラじゃないし出来ないし。
けれど、そう見られてるってことはつまり、近藤さんからしたら未だ子どもだってことなんじゃ・・・? 物理的な意味ではなく、精神的に。
隣に並んでいるのだけど、と、こういう時、年の差が恨めしい。もっと早く産まれていたのなら。
なんて、考えてもしかたがない。
「・・・だからってこれはねぇでしょう」
「なら、膝枕にするか。それならいいだろ?」
「近藤さん、寂しいんですかィ」
「そりゃあ。毎日喧嘩してるお前ら見てんの好きだからな。ほのぼのとしててよ。・・・ほら、好きなだけ惰眠を貪っちまえ」
胡坐をかいた足の上に無理矢理頭を押し付けられ、髪をすくように、再び撫でられる。横になったことで、自然と瞼が重くなっていく。
うとうとと落ちていく意識の中で、微かに土方さんの声が聞こえた気がした。
#95
わがたつ杣に 墨染の袖
光の部屋
その部屋は、真っ白い。
ここまで白い部屋や物を見たことがない、と沖田は思った。
窓や壁、床、天井も、この巨大な立方体は純白だ。そこにある、調度品の数々も、真っ白い。ソファにタンス、鏡台にテーブル。何処で買ったんだろう、そんな馬鹿馬鹿しいことを考えてみるがそこまで真面目に考えていないから、答えも何も出ず、常にその疑問が頭から消えない。
まぁ、それでも生活に差し支え無いから気にしないのだけど。
この部屋の中で唯一異質な“モノ”がある事に気付いたのは何時のことだっただろう。気付けばいつの間にかいるこの部屋、純白を汚すように“俺”がいる。
床と壁の境界も、部屋の広ささえも分からないその中、何故か俺は、暗黒色の隊服を身に纏い居るのだ。
音の無い、牢獄のような此処に。
頭が痛い。鐘が鳴っているような音が頭の中響き続けている。
此所に居る時だけ起こるこの頭痛は何か責めているようで、気がめいる。だから出ようとしても闔は内側から開かないようにか、凹凸も何もなくまっ平で、窓も高い位置にある上小さい。
ずっと、この場にいなければならないのか。成す術も無く途方に暮れていると大抵、このドアは開かれるのだ。その向こうにはいつも、闇を背負い立つ、同じ隊服を着た鬼がいる。
見張りなのか、救いの手なのか、分からない。
「総悟」
それでも名前を呼ばれれば、反射でなのか、それともそれ程迄に逃げ出したいのか、とにかくこの体は反応し、胸に解放感を抱き、差し込む闇へと歩き出す。
「頭痛いんでさァ」
「・・・気の持ちようで治るだろ」
そうだろうか、疑問に思いつつも自分に暗示を掛けるように痛くない、痛くないと心の中で数度呟くと、嘘のように痛みが引いた。
凄い。もしかして超能力者だったりしちまうのか。
話し掛けようと、爪先を見ていた視線を上げると其処には。
(姉・・・上・・・・・・?)
手の甲で目を擦るが其処にいる人物は変わらない。
黒い隊服は白い着物に、果ての無さそうな闇は再び元の真っ白な部屋へと、全てが白色に戻っていた。
けれどこれは幻だ。
姉上はもういない。
「そうちゃん・・・」
「─────姉上」
笑いかけるわけでもなく責めるわけでもなく、ただ見守るようにそこに立っている。
何か、言って欲しい。
怒っていても、悲しんでいるとしても、もっと声を聞かせて欲しい。
けれど、いくら待っても佇んだ儘で。
「赦してくだせェ・・・姉上」
俺さえいなければ。
姉上はもっと幸せになれたんじゃないだろうか。子どもで我儘しか言えなくて、姉上を独り占めしようと躍起になって、俺は自分の事しか考えられなかったから。
こんなにも、大切な人なのに。自分の幸せしか考えて無かった。姉上は俺が守るんだって、馬鹿みたいに思って。
─────姉上は優しい人だから、俺を責めたりしないってわかってる。
それでも戒めのように、俺の中、姉上は在り続ける。
いつまでも。
「総悟」
聞こえた声に重い瞼を開けると、薄日を背に微笑む近藤さんが其処にいた。
今度こそ、本物の。
「・・・近藤さん」
寝ている間に日向になっていたらしく、ポカポカと暖かい。まだ頭がぼーっとしていて、転がった儘でいると頭を大きな手で撫でられた。
久し振りにそんな風にされて、胸がなんだか擽ったくなった。照れ隠しに、子ども扱いしねぇでくだせぇと呟くと、少し痛いぐらい力が込められた。
「うなされてたぞ。・・・障子でも破いちまったのか? すげぇ謝ってたなァ」
「・・・違いやすぜ。姉上の七味使いきっちまっただけでさァ」
本当はそんなんじゃないけれど。
・・・馬鹿馬鹿しくて、言えない。夢の内容なんて。あれは妄想の産物で、本物の姉上じゃないからこそ尚の事。
「そういやトシの事も呼んでたな・・・。出張行っちまってからもう一週間経ったし、寂しいんだろ? 総悟」
「・・・別にあんな人いないほうが快適でいいでさァ。寂しい、なんざ全然・・・」
心の底からそう思っているのに、疑うように険しい顔をし、近藤さんは頭を撫でていた手を止めた。それを機に、上体を起こし目を擦る。
大分寝ていたらしく、寝る前に山崎が煎れてくれた茶がきんきんに冷えていた。
「総悟、来い」
「・・・へ?」
顔を上げると近藤さんが笑顔で両手を広げていた。そのままぎゅっと抱き締められる。
ちょっと・・・。俺はもう子どもじゃないんですけど。
「近藤さん、俺もう餓鬼じゃねぇんですけど」
「そんな事知ってるに決まってるだろ? お前は俺より強いし、頼りになるヤツだ。・・・だからこそ、たまには肩の力抜けよ」
別にそんな気張ってるわけじゃない。そんな面倒な事年中してるようなキャラじゃないし出来ないし。
けれど、そう見られてるってことはつまり、近藤さんからしたら未だ子どもだってことなんじゃ・・・? 物理的な意味ではなく、精神的に。
隣に並んでいるのだけど、と、こういう時、年の差が恨めしい。もっと早く産まれていたのなら。
なんて、考えてもしかたがない。
「・・・だからってこれはねぇでしょう」
「なら、膝枕にするか。それならいいだろ?」
「近藤さん、寂しいんですかィ」
「そりゃあ。毎日喧嘩してるお前ら見てんの好きだからな。ほのぼのとしててよ。・・・ほら、好きなだけ惰眠を貪っちまえ」
胡坐をかいた足の上に無理矢理頭を押し付けられ、髪をすくように、再び撫でられる。横になったことで、自然と瞼が重くなっていく。
うとうとと落ちていく意識の中で、微かに土方さんの声が聞こえた気がした。
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