梅々
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いやだ・・・
悪夢・・・。そう、悪夢を見ました。
内容は沖土←山で高沖←土なR指定なんですけどね。
沖田と山崎がやらしい事ばっかりいいやがる上に土方はなんか女々しいし困っちゃいました。
これは本当に悪夢だろうか。
まぁいいや。のだめ記念の音大百人一首。
内容は沖土←山で高沖←土なR指定なんですけどね。
沖田と山崎がやらしい事ばっかりいいやがる上に土方はなんか女々しいし困っちゃいました。
これは本当に悪夢だろうか。
まぁいいや。のだめ記念の音大百人一首。
筑波嶺の 峰より落つる みなの川
恋ぞつもりて 淵となりぬる
Appassionato
魅せられて
引きずりこまれて
身動きひとつできやしない
─────君がこの腕に飛込んできてくれたのなら
窓の外を見渡せば、青空の下には綺麗な白い山々が連なっていて、どこかの屋敷に飾ってある絵画のようだ。点々と散らばる薄墨色の雲が、完璧な冬の景色の調和を乱している。
そんな様子を表したような、荒々しく短調を奏でるバイオリンの音が冷めた空気を伝わり空気をより張りつめた物にする。
いつもは、優雅に繊細に音を奏でる指先が、激しく波打つ嵐の海のように余裕なさげに音を形にする。
「・・・またかよ」
「放っといて、くだせェ」
口調には露骨な変化は無いが、音色と表情が剣呑としている。
だからといって、耳障りな音では無いのが不思議だ。
普通、他の演奏者がこういう不の感情を抱きつつ楽器に向かった場合、どんなに有名で技巧的な演奏者だろうと音は悪くなる。
それなのに、こいつは。
逆にそれを利用し情熱的な曲をより情熱的に弾く。誰もが経験するスランプを、こいつはものともせずに毎日毎日バイオリンを奏で過ごす。どんなに練習したってこんなこと出来やしない。これこそ本物の“才能”なのだろう。
「・・・いい加減にしろ」
「あんたに指図されるようなコトじゃありやせん」
「音が、変わんだよ。お前の機嫌が悪いと」
室内を満たしていた音楽がぴたりと止む。
両手を下ろし、窓の外をぼんやりと視界に写し、躊躇いながら呟いた。
「やっぱ・・・音、ダメになってやすかィ? 自分じゃ分かんねぇものですねィ・・・全く」
しゅん、と先程までの演奏とはうってかわり、落ち込んだように頭を垂れ、椅子に無造作に座り込んだ。
ここで、音が悪くなったわけじゃない。と言えば、こいつは再び弾き始めるだろう。この世の不条理に対しての苛立ちを音にのせて。
けれどそれじゃあ“演奏家”としてのこいつを甘やかして、何も教えないでいるのと一緒だ。演奏に私情は要らないのだと、きちんと言わなければならない。いつでも、どんな時でも、繊細な音を出せるように。
もっともっと、いい音を奏でられる。総悟ならば。
それを聞きたくて、手元に置いてる。それなのに。
「音が悪くなったんじゃねぇよ。・・・そりゃあ、いつもとは少し違うけどよ」
「本当ですかィ!? ・・・よかった・・・・・・」
安心したように顔を上げ、微笑み、バイオリンを膝の上に置いた。慈しむように、それを撫でる。
音楽に通ずる者として、総悟の奏でる音に、総悟自身に惚れ込んだ。
こんなにも透き通るような音色を、奏でられる者は他にいない。けれど、総悟にならもっと澄んだ音を出せるし様々なテクニックをこなせるだろうと、そう見込んでこいつ専属の“先生”になった。
一応、これでもファンがいるぐらいは演奏家としてやっていけていた。総悟程巧かったわけではないが。・・・だから、もっとテクニックを教えてやろうと思ったのだろう。金にならない、こんなことをしているのだから。
それなのに、こいつは。
脇目もふらずただ一人を見ている。
「・・・また振られたんだろ」
「ふられてなんか。好きっつっていやせんもん、俺」
またあの人がどこぞの女のケツでも追い掛けてる場面でも目撃したのだろう。あの人の前ではどんなに気丈に振る舞っていても、こうして音に出てしまっていては、いつかあの人にもばれてしまいそうなものだ。・・・だが、近藤さんは鈍感だからあり得ないのか。
「・・・自分の音をしっかり持て」
「あんたはそういうくせに、近藤さんの事を諦めろって言う。それは矛盾ですぜ」
“矛盾”なんかしていない。周りに振り回されない強い精神力さえ持てればいいのだ。それと、大衆に自分の音を聞かせようとする、技巧を上達させる為の努力と目標と。
─────別に、俺にさえ聞かせてくれればそれだけで、いい。
ただのエゴイズムなのだとわかっている。もっと広い世界にとびたたせる為、といういくら大層な理由を並べて手元に引き留めておいたって、本心はただ離したくないだけだ。
「・・・・・・俺は、近藤さんさえ俺の演奏を好いてくれりゃあいいんでさァ」
誰か一人のためだけなんて。
この世界じゃ通用しない。大勢の人に聞かせて、認められなければならない。
これ程の技術があるのなら。
自己満足では済まされない。
「俺は・・・お前の音を良くする為に此処にいる。その気がねぇなら、・・・近藤さんだけが認めてくれりゃあいいと思ってんなら、もう来なくていい」
「・・・・・・すいやせん」
“好きだ”
と言えたのなら、もっと甘やかせていたのなら、少しでも俺をみてくれていたのだろうか。
#13
恋ぞつもりて 淵となりぬる
Appassionato
魅せられて
引きずりこまれて
身動きひとつできやしない
─────君がこの腕に飛込んできてくれたのなら
窓の外を見渡せば、青空の下には綺麗な白い山々が連なっていて、どこかの屋敷に飾ってある絵画のようだ。点々と散らばる薄墨色の雲が、完璧な冬の景色の調和を乱している。
そんな様子を表したような、荒々しく短調を奏でるバイオリンの音が冷めた空気を伝わり空気をより張りつめた物にする。
いつもは、優雅に繊細に音を奏でる指先が、激しく波打つ嵐の海のように余裕なさげに音を形にする。
「・・・またかよ」
「放っといて、くだせェ」
口調には露骨な変化は無いが、音色と表情が剣呑としている。
だからといって、耳障りな音では無いのが不思議だ。
普通、他の演奏者がこういう不の感情を抱きつつ楽器に向かった場合、どんなに有名で技巧的な演奏者だろうと音は悪くなる。
それなのに、こいつは。
逆にそれを利用し情熱的な曲をより情熱的に弾く。誰もが経験するスランプを、こいつはものともせずに毎日毎日バイオリンを奏で過ごす。どんなに練習したってこんなこと出来やしない。これこそ本物の“才能”なのだろう。
「・・・いい加減にしろ」
「あんたに指図されるようなコトじゃありやせん」
「音が、変わんだよ。お前の機嫌が悪いと」
室内を満たしていた音楽がぴたりと止む。
両手を下ろし、窓の外をぼんやりと視界に写し、躊躇いながら呟いた。
「やっぱ・・・音、ダメになってやすかィ? 自分じゃ分かんねぇものですねィ・・・全く」
しゅん、と先程までの演奏とはうってかわり、落ち込んだように頭を垂れ、椅子に無造作に座り込んだ。
ここで、音が悪くなったわけじゃない。と言えば、こいつは再び弾き始めるだろう。この世の不条理に対しての苛立ちを音にのせて。
けれどそれじゃあ“演奏家”としてのこいつを甘やかして、何も教えないでいるのと一緒だ。演奏に私情は要らないのだと、きちんと言わなければならない。いつでも、どんな時でも、繊細な音を出せるように。
もっともっと、いい音を奏でられる。総悟ならば。
それを聞きたくて、手元に置いてる。それなのに。
「音が悪くなったんじゃねぇよ。・・・そりゃあ、いつもとは少し違うけどよ」
「本当ですかィ!? ・・・よかった・・・・・・」
安心したように顔を上げ、微笑み、バイオリンを膝の上に置いた。慈しむように、それを撫でる。
音楽に通ずる者として、総悟の奏でる音に、総悟自身に惚れ込んだ。
こんなにも透き通るような音色を、奏でられる者は他にいない。けれど、総悟にならもっと澄んだ音を出せるし様々なテクニックをこなせるだろうと、そう見込んでこいつ専属の“先生”になった。
一応、これでもファンがいるぐらいは演奏家としてやっていけていた。総悟程巧かったわけではないが。・・・だから、もっとテクニックを教えてやろうと思ったのだろう。金にならない、こんなことをしているのだから。
それなのに、こいつは。
脇目もふらずただ一人を見ている。
「・・・また振られたんだろ」
「ふられてなんか。好きっつっていやせんもん、俺」
またあの人がどこぞの女のケツでも追い掛けてる場面でも目撃したのだろう。あの人の前ではどんなに気丈に振る舞っていても、こうして音に出てしまっていては、いつかあの人にもばれてしまいそうなものだ。・・・だが、近藤さんは鈍感だからあり得ないのか。
「・・・自分の音をしっかり持て」
「あんたはそういうくせに、近藤さんの事を諦めろって言う。それは矛盾ですぜ」
“矛盾”なんかしていない。周りに振り回されない強い精神力さえ持てればいいのだ。それと、大衆に自分の音を聞かせようとする、技巧を上達させる為の努力と目標と。
─────別に、俺にさえ聞かせてくれればそれだけで、いい。
ただのエゴイズムなのだとわかっている。もっと広い世界にとびたたせる為、といういくら大層な理由を並べて手元に引き留めておいたって、本心はただ離したくないだけだ。
「・・・・・・俺は、近藤さんさえ俺の演奏を好いてくれりゃあいいんでさァ」
誰か一人のためだけなんて。
この世界じゃ通用しない。大勢の人に聞かせて、認められなければならない。
これ程の技術があるのなら。
自己満足では済まされない。
「俺は・・・お前の音を良くする為に此処にいる。その気がねぇなら、・・・近藤さんだけが認めてくれりゃあいいと思ってんなら、もう来なくていい」
「・・・・・・すいやせん」
“好きだ”
と言えたのなら、もっと甘やかせていたのなら、少しでも俺をみてくれていたのだろうか。
#13
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