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梅々

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フライング

あさきゆめみしの大判のを三冊借りてきたので読みました。全七巻だったのか。・・・一旦返すかな。
にしてもいいですね。悲しくて雅で風流で、胸が満たされます。紫の上が健気過ぎます。
私は弘徽殿の女御(たしかこんな漢字)に一番似ていると思うのでもう眩しくて眩しくて。でも紫の上にはなりたいとは思いません。あんな男に閉じ込められて育ってあの人しか知らないわけですからね。それでも幸せだったのだろうけれど。

あと悲しいお知らせがまたしても。順位が下がりました。沖田の地位から土方の下に。土方の下ってのが気に食わないですが仕方ない。次があるさ。
人間に順位をつける行為はおかしい!
間違ってる!





それではクリスマスネタを分割してみました。その方が読みやすいですよね、多分。全三話にしてクリスマスには間に合わせたいです。
昨日も告げた通りトッシー×沖田です。いまのところ×ではないしクリスマスらしくもありませんが←待て
















君は僕のものであり僕のものではない

だから

せめて笑顔だけでいいから見せて欲しい





雪夜には程遠い





クリスマスに呑みましょうか、と珍しく山崎が言い出して、昼間の見回りを終え可哀想に聖夜なのに夜勤のやつらを見送り、山崎の部屋へ向かった。大体、こういう日に仕事の入るやつは運の悪い妻子持ちや彼女がいるやつと決まっているから、フリーな俺はのんびりと空いた時間を過ごす。

「やーまざきー」

「あっ、沖田さん」

声をかけたら彼女いない歴年の数の山崎が困ったように返事をした。俺も他人のことを言えないが未だ若いしそれを悲観していないから棚にあげる。
なんだ、と部屋を覗くと、正座をしている山崎の前に、人影。・・・土方さんだ、これは。そう思った途端、俯いていた顔が此方へ向けられた。
防衛本能が働く。

「げっ、」

「ぅおきた先輩ィィィ!!」

「うっわぁ・・・」

後退するよりも早く、スタンドに本体を乗っ取られた土方が飛びかかってきた。あと一瞬、引くのが速ければ良かったのだが残念なことに土方氏に抱きつかれてしまう。ぞわぞわぞわっと背筋を悪寒が走って、自分が猫だったなら毛が逆立っていたに違いない。
驚いたというよりも引いたように山崎が声を上げ目を細めて此方を見る。止めろ、俺は関係ない被害者だ。
そのままスリスリ頬擦りしてくるトッシーを引き離そうとするけれども、力は土方さんのままだからどうにもならなくて。

「山崎っ、助けなせェッ!」

「えっ、あっはい!」

寒気がひっきりなしに押し寄せて、山崎が急いで近寄って来るのを見てほっ、と安心した。
けれどそれが悪かった。安堵した途端少し力が抜けて、それを見逃さずトッシーはぐわっと俺を持ち上げ肩に担いだのだ。目をまんまるくした山崎と目が合う。多分いや絶対、同じ顔をしている。
そのままトッシーは脱兎の如く駆け出した。

「ちょっ、何しやがんでィ!?」

「ノーコメントでござる!」

「下ろせってのっ!」

「沖田さん・・・」

まるで花嫁を連れ去られた花婿のように、山崎は縁側に崩れ落ちた。ばたばたもがくも意味はないし山崎は助けてくれる気配もない。騒ぎになんだなんだと好奇心に満ちた顔を向ける隊士達も助けるつもりは毛頭ないだろうし、つまりはこのままトッシーの気の向くまま連れ去られるしかない。
無駄な抵抗を続けるのも空しくて、はぁぁぁと脱力する。目の前に見えるのは黒い着流し。嗅ぎ慣れた煙草の匂いが肺いっぱいに満ちて、なるようになれと諦めた。どうせヘタレで貧弱なオタクなのだから大したことできないだろう。そういうことにしておいて。

「・・・どこ行くんで?」

「秘密でござるよ。あ、そうだ」

ピタッとトッシーが立ち止まり、地に足がつく。ああ俺裸足なのに、下はアスファルトの道路で。靴ぐらい履かせてくれりゃいいのに、と思った途端口許に当てられた何か。
それは白い布で、ついでに言うなら薬品の匂いがして、呼吸した途端意識が鉛のように重く、ぼやけた。
流石貧弱なヘタレ、卑怯な手を使いやがる。

「着くまで寝てていいでござる」

それは許可じゃなく命令だろ。
言い返す間もなく瞼が落ちた。


***


どこかから聞こえてきた鼻唄はリズムが少し狂っていて、悪夢が始まったのかと思った。けれど体は重力を確り感じていて、後ろの方に落ちていきそうな、なんともいえない感覚がした。頬の辺りには柔らかい物が触れていて、甘い、としか形容できない匂いがする。
ここはどこだ? 屯所じゃない。気付くと同時に、鼻唄が近づいてきてそれが何の歌かが分かった。トッシーの好きな、美少女系アニメのOPだ。

「先輩、起きてしまったナリか?」

目を開くと目の前には見慣れない派手な蝶の柄の天井に、さっきと何ら変わりのない、土方擬きの姿。
眠っていた隙に事態は思ったよりも悪い方向へ進んでいた。公私のどちらでも来たことがあるが、此処は所謂ラブホだ。恋人達が愛を行動に移す場所。稀に、愛ではなく金のため行為をしる人もいるが。ここがどういう所か、違うけれど同じ場所に来たことのある俺は嫌という程分かって、サァァと血の気が引いた。
しかも、体が動かない。

「・・・おまえ、俺に何しやがった」

「なんでもないでござるよ。ちょっとだけ体の力が入らないようにしただけナリ」

「・・・おまえ、何したいの?」

「沖田先輩がいつも彼としてることでごさる」

「―――」

体が動いたのなら逃げ出していた。彼とは土方さんのことで、してることというのは誰にも言えないような行為のことで、驚いて声も出せなくなった。土方さんにならまだしも、この男にだけは触れられたくない。
どこがどう違うのか、体は一緒だろう、とは思うときもあるが、このオタクとその手の行為をすると想像しただけで吐き気を催すくらいだから中身の違いは大きな問題であるらしい。両方とも嫌いであることには変わりがないけれど。
俺が横たわっている、真っ赤なシルクのシーツがかけられたベッドに彼が座る。ギシッ、といやに軋んだスプリングにゴクリと喉が鳴ったのは恐怖によるもの。
そのまま、目を瞑って触れたとしても誰のものか分かる掌が頬を撫でた。ぞわぞわ、と体に伝ったのは興奮だった。これは仕方がない。だってこの掌が与えるものを、よく識っているのだから。とりあえず目を瞑らないようにすれば勘違いすることもないだろうと、頬を仄かに染めたトッシーを見る。いつもより頼りなさげで、そして、いつもより欲情を露にした彼。当然だ、土方さんとトッシーとでは経験の差が三桁は違う。

「・・・沖田先輩は彼が好きでござるか?」

冷たい指先が、あどけなく這う。いつもの愛欲に満ちた触れ方とは、違う。
絆されそうな温もりに満ちていて、忌々しい。

「大嫌いでィ」

呟いた声は何故か、掠れた。

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