梅々
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いつまでも続くことなんて
椎名林檎と東京事変にはまっております今日この頃。歌詞が好きな歌と曲調が好きな歌が合いません。遭難と茎は両方好きです。
それでは、なんか遭難イメージになってきた夏の中編。
それでは、なんか遭難イメージになってきた夏の中編。
本能が理解したとて、それがココロまで届かないのなら、知らないのと変わらない。
理解しようとする行為自体が、無意味。
憂鬱な月を手に入れて
夏休みに入ってからもう三日が経った。歴史系の宿題は近藤さんらと図書館へ行く約束をしていて終わらない、数学は一日三頁で七月いっぱいには終わる予定、国語はもう終わっている。全く予定の入っていないのは苦手な英語だけだ。
英語。英語といえば、沖田。
何でか沖田は英語が得意で、毎年英語だけは教え合いやっていた。土方が唯一苦手なのが英語のスピーキング、発音関係だ。その苦手な部分を沖田が最も得意とするのは何の因果だろう。
そのノリで、去年の夏休みを思い出す。
初日。土方さん、アイス食べたいから10円貸して。
翌日。土方さん、昨日来たときDS忘れてったから返してくだせぇ。あ、ついでにアイス。
三日目。作文手伝ってくだせぇ。あ、今日ガリガリ君持ってきやした。あと借りてたCDも。
(よくよく考えてみれば、この現状は異常なのだ)
三日会っていなかった、果たしてこれは、最高記録ではないだろうか?
避けられている。鈍い土方にもよく分かる程あからさまに。
何故、避けられた? 何を怒らせたのだ? あの日。
(ファーストキスのことか? いや、でも・・・)
覚えが無ければそんなことでとも思う。が、価値観など人各々だ。如何なる理由で沖田にキスしたか思い出せそうにないが謝って欲しいと言っているのだ、謝るべきだろう。でも、口先だけ謝る、というのも。
うだうだ考えていても、と土方はシャツを羽織り、サンダルを足に引っ掛け玄関の扉をガラリ、と開けた。
「「あ」」
インターホンに寸でのところで触れそうで触れない、そんな位置に人指し指を伸ばした沖田が微かに驚いたような表情を浮かべ立っていた。本当に変化が乏しい顔だ。もう少し感情を表に出してみても罰は当たらないだろう。
指を下ろした沖田が手に持っていた紙袋をん、と渡す。訳が分からないままそれを受けとり中身を見ると、アイスと貸していたCD。
「・・・それ返しやすから、感想文手伝ってくだせぇ」
「別にいいけどよ。・・・英語も持ってきたか?」
「一応。でも明日またやりに来やすぜ? 今日中に感想文終わんねぇと思うし」
そうか、と返し中へ入ると当たり前のように沖田が後について入ってくる。何も無かったことになっているのかと思うがそれにしては態度が少し素っ気ない。
沖田専用に、と冷蔵庫に常備してある冷たいココアをコップに注ぎ、部屋へ向かうと土方のベッドの白い波の中、沖田はうつ伏せで横たわっていた。
錦糸の髪がシーツに舞って、夏の日に照らされ煌めく。ベッドに座って、その頭をそっと撫でる。刹那微かに強張った体の動揺を隠すように、沖田は寝返りをうち土方を睨みつける。
「近藤さんが、」
「ん?」
「明後日の祭り行こうって」
「・・・あぁ」
さわさわと頭を撫でつつカレンダーを見遣る。毎年この週の真ん中という微妙な日にちから二日間それなりに大規模な祭りが行われる。神社のある通り一帯に露店が並び、川に燈籠を流すのだ。二日目にはその河岸で花火もやる。
明後日は、その祭りの初日だ。
去年も三人で行った。途中沖田が迷子になったり色々と大変だったのを覚えている。
「・・・浴衣着たらどうだ? 今年は」
「何その言いよう。あんた俺の彼氏ですかィ?」
嘲笑を浮かべパシンと撫でていた手を払い、沖田は背を向けテーブルにつく。
急に下がった温度に、冗談を返せない。まずいことを言ったわけではないというのに。拒絶しているように見える、背中。
何も言えなくなるではないか。
「早く手伝ってくだせぇよ。終わんねぇだろィ」
「・・・なぁ、何がいけないんだよ?」
「はぁ?」
怪訝な顔して振り返る沖田に、ソファから下り土方は距離をつめる。不快そうに眉を寄せただけで、沖田はその距離をどうしようともしなかった。
後退りされなくてよかったと土方は思いながら次の言葉を探す。
沖田はキスしたことを謝れ、と言ったわけではない。そのことに関する何かを謝れと言った。しかし、残念ながらぽっかりすっかりそのことを覚えていないから謝れない。
そして今日は、“彼氏”ぶった言葉に沖田は距離を開けた。土方的にはそんなつもりはなかったが言葉は受け手次第で変わる、気に触ったのなら謝るべきなのは土方。
でも。
異常なまでにその手の言動に拒絶を示すのは、何故だ?
「お前、何で怒ってんの」
「怒ってなんかいやせんぜ。・・・早く勉強しやしょうってば」
ふい、と沖田は目をそらす。
嘘をつくのが上手な癖に、こうして沖田は稀に嘘の綻びを見せる。追及されたくない、と沖田が思っているであろうことに限って。
沖田は脆い、と土方は思う。身を守るために嘘をついている、などと大層なものではない、ただ単に土方をいたぶるための嘘ばかりだけれど。沖田が嘘で身を守ろうとすると僅かな矛盾が生じるのだ。
脆い、という単語が似合わないくせに時々果てしなく、脆い。
今まで干渉をしてこなかったのは沖田の為を思ってか、それともそこまで深く、関わりたくなかったからだろうか。
「話そらすなよ」
「・・・詮索なんかしないでくだせぇよ。そんなのできる程、馬鹿な俺の頭はでかくねぇですぜ」
言い捨て背を向け、沖田は宿題をし始める。
今度こそ本当に、会話が終わる。
きっと、過去にもっと沖田に干渉していたのなら。仮想の今ならばこの沈黙を破り詮索などせずとも沖田の心が分かっただろうに。
―――――放っておけばいいのだ、今迄だってそうだったのだから。
なのに気になってしまう、今更如何しようもないというのに。
「土方さん、これあってる?」
「見してみろよ」
“何事も無かったように”
何度繰り返しただろう。まやかして縮まった距離など、無いも同然だというのに。
手伝え、といったくせに既に文面は完成していたらしい、さぁっと目を通しても数個の漢字の間違いがあるぐらい。非のうちどころはないというか、微かに近藤さんの書く文に被るのは気のせいだろうか。
「漢字間違ってるとこ印付けといたから」
「へい、ありがとうごぜぇやす」
夏が過ぎたら冬が来る。冬が終われば、春が。
そうしたら皆散々になる。
―――――距離をまやかしたまま。
それに、堪えられるだろうか。
理解しようとする行為自体が、無意味。
憂鬱な月を手に入れて
夏休みに入ってからもう三日が経った。歴史系の宿題は近藤さんらと図書館へ行く約束をしていて終わらない、数学は一日三頁で七月いっぱいには終わる予定、国語はもう終わっている。全く予定の入っていないのは苦手な英語だけだ。
英語。英語といえば、沖田。
何でか沖田は英語が得意で、毎年英語だけは教え合いやっていた。土方が唯一苦手なのが英語のスピーキング、発音関係だ。その苦手な部分を沖田が最も得意とするのは何の因果だろう。
そのノリで、去年の夏休みを思い出す。
初日。土方さん、アイス食べたいから10円貸して。
翌日。土方さん、昨日来たときDS忘れてったから返してくだせぇ。あ、ついでにアイス。
三日目。作文手伝ってくだせぇ。あ、今日ガリガリ君持ってきやした。あと借りてたCDも。
(よくよく考えてみれば、この現状は異常なのだ)
三日会っていなかった、果たしてこれは、最高記録ではないだろうか?
避けられている。鈍い土方にもよく分かる程あからさまに。
何故、避けられた? 何を怒らせたのだ? あの日。
(ファーストキスのことか? いや、でも・・・)
覚えが無ければそんなことでとも思う。が、価値観など人各々だ。如何なる理由で沖田にキスしたか思い出せそうにないが謝って欲しいと言っているのだ、謝るべきだろう。でも、口先だけ謝る、というのも。
うだうだ考えていても、と土方はシャツを羽織り、サンダルを足に引っ掛け玄関の扉をガラリ、と開けた。
「「あ」」
インターホンに寸でのところで触れそうで触れない、そんな位置に人指し指を伸ばした沖田が微かに驚いたような表情を浮かべ立っていた。本当に変化が乏しい顔だ。もう少し感情を表に出してみても罰は当たらないだろう。
指を下ろした沖田が手に持っていた紙袋をん、と渡す。訳が分からないままそれを受けとり中身を見ると、アイスと貸していたCD。
「・・・それ返しやすから、感想文手伝ってくだせぇ」
「別にいいけどよ。・・・英語も持ってきたか?」
「一応。でも明日またやりに来やすぜ? 今日中に感想文終わんねぇと思うし」
そうか、と返し中へ入ると当たり前のように沖田が後について入ってくる。何も無かったことになっているのかと思うがそれにしては態度が少し素っ気ない。
沖田専用に、と冷蔵庫に常備してある冷たいココアをコップに注ぎ、部屋へ向かうと土方のベッドの白い波の中、沖田はうつ伏せで横たわっていた。
錦糸の髪がシーツに舞って、夏の日に照らされ煌めく。ベッドに座って、その頭をそっと撫でる。刹那微かに強張った体の動揺を隠すように、沖田は寝返りをうち土方を睨みつける。
「近藤さんが、」
「ん?」
「明後日の祭り行こうって」
「・・・あぁ」
さわさわと頭を撫でつつカレンダーを見遣る。毎年この週の真ん中という微妙な日にちから二日間それなりに大規模な祭りが行われる。神社のある通り一帯に露店が並び、川に燈籠を流すのだ。二日目にはその河岸で花火もやる。
明後日は、その祭りの初日だ。
去年も三人で行った。途中沖田が迷子になったり色々と大変だったのを覚えている。
「・・・浴衣着たらどうだ? 今年は」
「何その言いよう。あんた俺の彼氏ですかィ?」
嘲笑を浮かべパシンと撫でていた手を払い、沖田は背を向けテーブルにつく。
急に下がった温度に、冗談を返せない。まずいことを言ったわけではないというのに。拒絶しているように見える、背中。
何も言えなくなるではないか。
「早く手伝ってくだせぇよ。終わんねぇだろィ」
「・・・なぁ、何がいけないんだよ?」
「はぁ?」
怪訝な顔して振り返る沖田に、ソファから下り土方は距離をつめる。不快そうに眉を寄せただけで、沖田はその距離をどうしようともしなかった。
後退りされなくてよかったと土方は思いながら次の言葉を探す。
沖田はキスしたことを謝れ、と言ったわけではない。そのことに関する何かを謝れと言った。しかし、残念ながらぽっかりすっかりそのことを覚えていないから謝れない。
そして今日は、“彼氏”ぶった言葉に沖田は距離を開けた。土方的にはそんなつもりはなかったが言葉は受け手次第で変わる、気に触ったのなら謝るべきなのは土方。
でも。
異常なまでにその手の言動に拒絶を示すのは、何故だ?
「お前、何で怒ってんの」
「怒ってなんかいやせんぜ。・・・早く勉強しやしょうってば」
ふい、と沖田は目をそらす。
嘘をつくのが上手な癖に、こうして沖田は稀に嘘の綻びを見せる。追及されたくない、と沖田が思っているであろうことに限って。
沖田は脆い、と土方は思う。身を守るために嘘をついている、などと大層なものではない、ただ単に土方をいたぶるための嘘ばかりだけれど。沖田が嘘で身を守ろうとすると僅かな矛盾が生じるのだ。
脆い、という単語が似合わないくせに時々果てしなく、脆い。
今まで干渉をしてこなかったのは沖田の為を思ってか、それともそこまで深く、関わりたくなかったからだろうか。
「話そらすなよ」
「・・・詮索なんかしないでくだせぇよ。そんなのできる程、馬鹿な俺の頭はでかくねぇですぜ」
言い捨て背を向け、沖田は宿題をし始める。
今度こそ本当に、会話が終わる。
きっと、過去にもっと沖田に干渉していたのなら。仮想の今ならばこの沈黙を破り詮索などせずとも沖田の心が分かっただろうに。
―――――放っておけばいいのだ、今迄だってそうだったのだから。
なのに気になってしまう、今更如何しようもないというのに。
「土方さん、これあってる?」
「見してみろよ」
“何事も無かったように”
何度繰り返しただろう。まやかして縮まった距離など、無いも同然だというのに。
手伝え、といったくせに既に文面は完成していたらしい、さぁっと目を通しても数個の漢字の間違いがあるぐらい。非のうちどころはないというか、微かに近藤さんの書く文に被るのは気のせいだろうか。
「漢字間違ってるとこ印付けといたから」
「へい、ありがとうごぜぇやす」
夏が過ぎたら冬が来る。冬が終われば、春が。
そうしたら皆散々になる。
―――――距離をまやかしたまま。
それに、堪えられるだろうか。
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