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梅々

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認めないよ

沖田が多重人格になったら、と考えたら死にそうになりました。
現れた人格がミツバさんのようだったら、土方の呼吸は一瞬止まって、怯えると思う。



柔い笑みで優しく微笑む沖田に、脳が悲鳴を上げた。

これは違う。

沖田ではない。

夢だ、これは―――――まるで、彼女のような。

「土方さん。見回りでしょう? 早く行きやしょう」

口調は変わらない、が、物言いが全く違う。落ち着いた、それでいて聞いていて春を彷彿とさせる柔和な、彼女と同じ話し方だ。今はもう、永遠の春の中にいる彼女の。

「・・・総悟」

名前を呼んだのは縋るためだ、質の悪い冗談であってくれ。
ニヤニヤして、「びびってやんの」と指をさして。

「総悟・・・それが俺の名前なんですね」







土方のことも、近藤さんのことも、皆覚えて知ってるけどミツバさんのことだけを知らない人格だと思う。
土方はとても痛いと思う。心臓を針で突くように、または、真綿でくるんで呼吸を奪っていくような。
書きたいけど、書けるかな・・・。
沖田はミツバさんの死で多重人格になるほど、弱くない。





では、おわらなかったひめはじめです。次で終わらす。終わらなかったらデスノートに名前を・・・。
緩く背後に気をつけてください。














愛しいと思えど、素直になるのはありえない。

互いに。





シンデレラデー





 土方は、一つ息を吐いて目を瞑った。そして、さらに気持ちを落ち着かせようと深呼吸をする。
 戸を開けて廊下に出る。幾つもの壁を隔て、大勢の笑い声が届く。広間に集って酒を飲んでる奴等だろう。昨日も同じように過ごしただろうに、祝い事がある度に飲みやがって、と舐める程度にしか飲めない土方は苦々しい顔をする。呆れと羨望を同じほど混ぜて。
 だが、今日はそれよりも土方の思考を奪うことがある。
 沖田と過ごすのだ、今夜は。昨日もそうだったが、大きく意味合いを変えて。
 だから土方は柄にもなく緊張をしている。胸の辺りがそわそわし、妙に落ち着かない。久々の感覚は不快なものではなく、土方には心地好くもある。

「・・・本当、柄じゃねぇ」

 初詣の後、車から降りるとき、土方は初めて夜の約束をした。今夜部屋に行くから、ドアを掴む沖田の剣士にしては華奢な指を見つめながら言えば、顔を背けたまま沖田は小さく頷いた。表情は窺うことができなかったが、見なくても照れているのが分かって。こんな風に逢う約束をしたのはこれが生まれて初めてで、それが沖田相手だという事実が嬉しい。他の誰でもない、沖田なのだということが。
 それが婉曲に、沖田と真剣に付き合い始めたことを表しているようで。
 夕飯も終えたし入浴も、たったいま済ましたばかりだ。準備することはもう何もないはずだ。そわそわした気持ちを落ち着けようと土方は煙草に手を伸ばし、沖田の部屋への道を辿る。縁側へ出て歩くと、柔く月明かりが足元を照らす。仄かな明かりに、ふとミツバを思った。
 所作にはいつも優しさを感じられ、いつも微笑んでいた。自分のことより他者を優先し、それでいて中々頑固だったり、辛党だったり。土方にとって、肉親以外で初めて心底大切にしたいと思った女性だった。儚く見えてもここにいると優しく光る、月のような。愛していたのだ。何に変えても守りたいと思った。
 だからこそ、手放した。
 部屋の前へつくと行灯の仄かな灯りが障子から漏れていた。土方はいつもの自分を装いながら、障子を開ける。

「・・・」

「土方さん」

 声が出なくなった。何がいつも通りだ、土方は一気に騒ぎ出した心臓を治めようと障子を必要以上に丁寧に閉じながら素数を数える。
 沖田は待っていた。布団の上に正座して。頼りない光がゆらゆら、姿を照らしその度に髪が艶めく。此方を熟視る表情も必然的に上目使いでしかも、困ったように眉を寄せているものだから、土方は早々に煙草を灰皿で揉み消す。こうして沖田の部屋に灰皿が置いてあるという事実だけでもう、土方は舞い上がりそうになっている。
 抱き締めて隈無く愛撫し、甘く聴覚を震わす声を聞きたい。赤い唇を腫れるまでに貪って、涙の溜まった瞳に俺だけを写したい。
 腹の底で愛しさと情欲が絡み合う感覚に堪えきれず、未だちょこんと座ったままの沖田を優しく抱き締めた。急いていると思われるのは癪だ。男が廃る。

「・・・いつも寝っ転んで待ってたよな」

「・・・アンタが、来るって言うから悪いんでさ」

 拗ねたように、甘えた声が文句を言って、ぎゅうっと縋られた。変に意識してそわそわして、どうしようもなく正座して待っていたのか。そんな様子を見たかった。きっと言ったら怒られるだろうが、とても愛らしい様だったと思うのだ。
 それに、と土方は口許を綻ばせ沖田の首筋に当てる。同じようにそわそわしていたというのが嬉しい。初めての夜も大切なものであったが、今日も同等の価値がある。やっと、心が結ばれたのだから。

「明日から毎晩来るから、安心して待っとけ」

「・・・っやなこった!」

 包むように抱いていた体をゆっくりと横たえさせ、額から瞼、頬へ唇を移動させ最後に唇同士を重ねる。不埒な思いはそこには含まれておらず、ただただ愛しさのみを込めて、沖田の紅唇を食み、間を舌でチロチロと舐めた。不埒な動きをしているのは土方の指先だ。肩から横腹へと撫で、腰の辺りを柔く揉む。両手を桃尻に這わせ軽く指先で押してはその弾力を楽しんだ。
 沖田が舌の侵入を催促すると同時に、頬擦りをして舐め回したいほど愛らしい臀部を鷲掴む。

「はふっ、んん!」

 沖田が回した腕が髪を掴み、尻への愛撫を制止しようともがくが、本気の行動ではない。手の力は優しく、吐息は円やかで、溶けきった表情に揺れる腰。沖田の涎を舐め啜ってから顔を離すと油断しきった、潤んだ顔で沖田が土方を熟視る。
 まるで止めたことを非難しているようで、欲を真っ直ぐに伝えながらも幼い表情に苦笑する。苦笑しながら、腰を撫でていた足を内腿へ滑らせ、開脚させる。徐々に開く寝間着の裾から淡い色の肌が露になっていき、沖田の秘所は見慣れた下着一枚だけが隠す。
 押さえてろ、言えば真っ赤な顔をしてぶつぶつ文句を言いながらもはしたなく開いた足を掴み、甘い吐息を吐いた。

「ヤってる時は可愛いよな、おまえ」

「・・・どこが」

「声とか顔とか」

 憮然とした声に思ったまま伝える。本音を言えば全てが可愛く思える、行為中は。嫌がろうと強請ろうと、沖田が相手ならば欲情する。
 ふーん、と言った沖田はそのまま、唇を噛みしめ真一文字に結んだ。何事かと、思いながらも服の上から沖田の胸をまさぐる。柔らかみのない、白い滑らかなそれはまっさらな雪のようだ。誰にも踏み締められていないそこに、痕を残していく。赤い花を。その度に沖田は声を漏らすが変にくぐもっていて、怪訝に思いながら、触れずとも熟れている赤い身の縁をなぞる。

「っん!」

「・・・なんで唇噛んでんの」

「あんたが、可愛いって言ったから」

 潤んだ瞳を向け言うだけ言って沖田は再び歯を噛みしめた。沖田が変に意地を張ると対抗して土方も意地を張りたくなる。昔からそうだったな、なんて頭の片隅で思いながら土方は口角を上げた。

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