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梅々

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祝十万打!

涙が出そうになって、竹刀を持ったまま駆け出した。見慣れた畦道に獣道を立ち止まることなく駆けて、駆けて。俺だけの秘密基地に入ると埃っぽい床に突っ伏して竹刀を放って、我慢するのをやめてぼとぼと涙を溢す。

悔しい、悔しい。

また土方に負けた。強くなったと思ったのに、いつもより打ち込めたのに、負けた。

俺の方が先輩なのに、俺の方が頑張ってるのに、俺の方が近藤さんのことも姉上のことも大好きなのに。

俺がまだ餓鬼だから。あいつは俺より大人だから。



「ちくしょう……」



いつもは温かく感じる祠も今日はよそよそしい。神無月だからだろうか。姉上が言っていた、神様がお出掛けしてしまう月なのだと。

顔をあげても何もない。

壁が目の前にあるだけだ。

本当は、あいつが誰にも知られないようにこっそりと素振りしてるしているのもあいつが近藤さんや姉上のことを大事に思っているのも知っている。だけど、悔しい気持ちは収まらない。

「…しんじまえばかひじかた」

「死ねはねぇだろ」

「!」



はっと振り返る。

開け放したままの傷んだ木の戸の向こう、憎たらしい男が立っていた。ひとつに束ねた髪がゆらゆら揺れている。

なんで、なんで、なんでいるんだこいつ。誰も知らない場所なのに。何しに来たの。なんでいるの。

あんぐりと口を開けて見上げる。いつも通り機嫌悪そうな顔をして、土方が手を差し出した。でもいつもとちょっと違う表情だ。



「近藤さんがおやつ準備したから帰ってこいってよ」

「やだ。いらない」

「……何拗ねてんだ」

「べっつっにっ!」



ふんと顔を反らす。目前の壁は真っ暗だ。森の中だからか、昼間でも薄暗い。近藤さんとおやつを食べるのはとてもとても、楽しそうだけど。こいつと一緒に戻るのは嫌だ。何も知らないで、すました顔しやがって大嫌いだ。ばかやろう早くくたばっちまえ。



「おいこら餓鬼。罵ってんじゃねぇよ」

「うぎゃ」



襟をぐいと引っ張られて喉に食い込む、そのまま持ち上げられて、祠から出される。



「離せよっ!」

「泣くほど悔しいなら拗ねてないで稽古すればいいだろ」

「っ……死ね!!」

「うっ」



泣き顔を見られた!

やっちまった、と思うと同時に足が動いていた。土方の横っ腹を蹴っ飛ばして手が離れた隙に駆け出す。今度は道場へ向かって。おやつを食べたらサボらないで稽古して、ぎゃふんと言わせてやる。

次こそは負けないからな!













十万打ありがとうございます!!!

嬉しすぎて嬉しすぎてどうしよう。



十万打記念にリクエスト受け付けたいと思います!

何かありましたらどうぞ!

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