梅々
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対する私は腹黒さん
総悟、と土方さんが縋ってくる。その体に腕を回しながら外から聞こえる雨音に耳を済ます。台風だ。
風は涼しくても湿度が高いから、九月の下旬であろうとも付けっぱなしの扇風機に薄い布団。それでもエアコンは使わないようになったから確実に夏は過ぎ去っている。
なんて余所事を、許してくれなくて。
「総悟、」
「なんでさ」
「俺のことだけを、考えろよ」
そういうアンタは俺ではない人を抱くのに。
口の中で純粋な反論がもごもご、出口を探す。ザァザァ、荒んだ雨が窓を叩く。
視界にぎりぎり入る位置に、姉上の仏壇が見える。土方さんは、悉く自分の愛した人を純粋に愛せない星の下に生まれたらしい。愛してるが故に手を離された姉上。愛してるが故に抱かれない俺。俺の方は、他にもいくつも理由はありそうだけど。俺に欲情したって女の所に行ってわざわざ鎮めるのだから変わっている。
そんな土方さんは執着心と独占欲が滅法強いから。俺が離れるふりをすればがんじがらめにして捕まえようとする。そこが、好き。
「大事なんだ、おまえが」
「知ってまさァ」
おかしな人だ。なんて、俺も同じだから言えない。束縛されたいから旦那に遊んでもらって、束縛したくはないから他の女との関係を見逃す。
俺たちは、なんなんだろう。
この人の腕の中にいられるのなら、なんでもいいのだけれど。
というわけで腹黒な沖田で土沖でした。
小さい秋は見つかるが大きい秋を見つけられません。そして明日は発表日です。第一次選抜的な?胃がパーンとなりそうなストレスとともに私は結果を待つばかり。
うひゃあ死ぬ。
それでは七月の始め頃に小ネタにしようと書いていたものです。異国パロで土沖、かな?
What can I do for you?
砂上の城で
果てしなく蒼い空の下、灰色の景色が広がっていた。
瓦礫に死体、血溜り。
そんな景色の中、探し人は瓦礫の山の上で空を見上げていた。硝煙で姿が霞む。
「総悟」
「・・・近藤さん」
近藤さんが名前を呼ぶと、無表情に少しの安堵を滲ませてそれは振り返った。
とてて、と瓦礫の山から降りて、それは近藤さんの胸に抱きついた。子犬が甘えるような仕草でじゃれて、近藤さんも嬉しそうに頭を撫でる。
そんな二人を横目に辺りを見回す。全て灰色だ。いつの間にか築かれていた砦もそこにいただろう人間も、皆一様にただの塊になってしまっている。足元を見れば瓦礫の下から銃を握った手が見えた。肌色に赤と、そこだけが鮮やかに見えてより生々しい。
総悟と呼ばれているそれが何なのか、俺も近藤さんも知らない。近藤さんが父親から受け継いだものだそうで、それから十年近く経った今も何かは分からないまま。ただ、人ではないのは確かだ。何百人もの人間を殺して、返り血一つ浴びていないのだから。
―――――妖精だよ、妖精!
昔、そう近藤さんが騒いでいたが妖精には見えない。妖精なら人を殺すだろうか。機械だというのなら、まだ分かるけれど。それでも十年前に比べて見た目がほんの少し成長していると思うから、それも違うのだろう。
明確な正体なんてなくても彼には居場所があるから、それでいいと放置して早十年。誰もそれに触れたりしない。
「帰るぞ、総悟」
「へい」
近藤さんに手を引かれ、嬉しそうにそれは城へと戻る。近藤さんはこの小さな国の王だ。自覚はないようだけれど。俺はその近衛隊長なのだが、この国の守り神と化した彼のお陰で仕事は殆どなく、秘書と呼ばれるのが正しいような、そんな仕事をしている。
「総悟、風呂入ったら一緒に飯食おうな」
「やった! じゃあ急いで入りやすね」
「トシは総悟のこと見ててやって。俺ちょっとお妙さんとこ行ってくる!」
「あいよ」
妙とは一応近藤さんのフィアンセで、十年間ストーカー紛いの求婚をし続け、漸く結婚前提のお付き合いを認められた。近藤さんにベタベタなそれも経緯を知っているから、近藤さんが自分を放って行ってしまっても文句をたれたりはしない。
とてもよくできたものだ。と他人のフリをしてみるとそう思う。
「近衛隊長さん」
「あんだよ」
「風呂入るんで、出てってくれやせんか」
「・・・今の時間、侍女もいねぇから俺が代わりにてめぇの世話しなきゃなんねぇんだよ」
これは、とても不器用だ。一人で風呂に入るのもままならず、飯の食い方も汚い。だから大抵は誰かが世話をしなければならないのだが、今日は誰にも告げていない。
俺が、世話したかったから。
そんなことを、誰かに告げたらどんな目で見られるだろうか。
渋々とそれは服を脱ぐ。今日の衣装は真っ白い、東の国の民族衣装のようなものだった。襟やスリットの入った裾に、赤いラインが刺繍されている。
それを脱いだ背中もまた白い。背骨の滑らかなラインや、尖った肩だとか。芸術品のようで、いくら眺めていても飽きない。
「近衛隊長さん」
「名前覚える気ねぇよな、おまえ」
「近藤さん以外はどうでもいいんで。・・・一人で入るから、本当にあんたはどっか行ってくだせぇ。俺が休んでる間は国を守るとか」
嫌味たらしく付け加えられた後半よりも前半の台詞が、ぐさっと胸に突き刺さった。多感な人間ではないから、そんな周知の事実を言われたところであぁそうかよと呆れるのが普通、なのに。
これはよくない傾向だ、早くなんとかしないと手遅れになる。
もう、手遅れかもしれないけれど。
「あの瓦礫の山を越えて攻め入るやつなんざいねぇよ。それこそ人間じゃねぇ」
「・・・そう思うなら、お好きなように」
「だから、腹の傷隠さなくてもいいんだけど。寧ろ見せろ」
「・・・知ってたんですかィ。アンタも人が悪いや」
頑なに此方を向かなかったそれが、此方を向く。黒い絹のズボンの上の白い横腹に、赤黒い血がついている。それの前に跪いて見ると、一筋の切り傷があった。対してでかく深いわけではないが、浅い傷でもなさそうだ。こんな傷を負っているくせに、よく無表情でいられる。
「前にも、怪我したことあんのか」
「今日が初めてでさ。・・・俺、もう駄目なのかなぁ」
染々と自分の怪我を見ながら他人事のように言う。
改めてこれはなんなんだろうと、真面目に思う。愛らしい面をした、若干人間味のあるロボットか。近藤さんになついているのだって、ペットが主人になついているようなものなのかもしれない。主人を慕うように、プログラムされているとか。
なんだか酷く、目の前のこれが可哀想になって、気付けばぺろ、と傷を舐めていた。
するとひぃ、と悲鳴を上げるものだから、その反応に気を良くする。
「な、なにしてんのアンタ!」
「舐めりゃ治るってよく言うだろ」
「だからって、ちょっと」
あわわ、と口をパクパクさせるのがおかしくておかしくて。ぺろぺろ舐めていれば本当に傷が塞がっていっているような気がした。
錯覚とはいつも甘いものだ。願いが、一瞬だけ自分の体を操って、体感させる。傷が早く治れば、なかったことになれば、こいつは今のまま、終わりを予期することなく近藤さんの傍にいられる。
俺よりも強くて、逆に瞬殺されてしまいそうだけれど、守りたいと思う。この愛しさは、なんだ?
「近衛隊長さん、」
「・・・」
「ひじかたさんっ!」
「なんだよ、ちゃんと名前覚えてんじゃねぇか」
顔を離して指で傷を辿る。息を飲んで微かに怯えてみせたのが堪らない。勘違いが飽和して、俺はこいつを好きなんじゃ、と真面目に思ってしまいそうだ。
錯覚ではなく本当に、傷口が浅くなっていて俺は実は凄かったのか、なんてふざけて考えてみる。
二人が、幸せにいられればいいと思う。でも、人を殺させて幸せになってほしいと願うのはそこはかとない矛盾だ。
漸く解放してやって、離れてやれば柳眉を寄せながらそれは背を向けてズボンを脱いだ。此方も同じく背を向けて待っていれば、脱ぎ終えたと肩を叩いてくる。
「近衛隊長さん」
「あんだよ」
タオルを腰に巻いたそれを視界に入れて、王族専用であるはずの浴場へ足を踏み入れる。王族専用とはいえども、この国の王は基本的に国民に優しいので、質素でありながらも威厳を感じられるような、そんな作りだ。
俺は入れてやったことしかないけれど、これはそんなことを気にせず堂々と入って、総悟専用な、と近藤さん手作りの椅子にちょこんと腰かける。
「ずっと今のままだったらいいのにって、思ったことはありやすか」
「・・・ずっと、そう思ってるよ」
お前に会ってから、十年来。
かけるぞ、言ってからシャワーで頭を濡らしてやっていれば、水音に紛れて俺もでさァと聞こえた。
これの願う、平穏の中に。俺が含まれているのならばそれだけでいい。
風は涼しくても湿度が高いから、九月の下旬であろうとも付けっぱなしの扇風機に薄い布団。それでもエアコンは使わないようになったから確実に夏は過ぎ去っている。
なんて余所事を、許してくれなくて。
「総悟、」
「なんでさ」
「俺のことだけを、考えろよ」
そういうアンタは俺ではない人を抱くのに。
口の中で純粋な反論がもごもご、出口を探す。ザァザァ、荒んだ雨が窓を叩く。
視界にぎりぎり入る位置に、姉上の仏壇が見える。土方さんは、悉く自分の愛した人を純粋に愛せない星の下に生まれたらしい。愛してるが故に手を離された姉上。愛してるが故に抱かれない俺。俺の方は、他にもいくつも理由はありそうだけど。俺に欲情したって女の所に行ってわざわざ鎮めるのだから変わっている。
そんな土方さんは執着心と独占欲が滅法強いから。俺が離れるふりをすればがんじがらめにして捕まえようとする。そこが、好き。
「大事なんだ、おまえが」
「知ってまさァ」
おかしな人だ。なんて、俺も同じだから言えない。束縛されたいから旦那に遊んでもらって、束縛したくはないから他の女との関係を見逃す。
俺たちは、なんなんだろう。
この人の腕の中にいられるのなら、なんでもいいのだけれど。
というわけで腹黒な沖田で土沖でした。
小さい秋は見つかるが大きい秋を見つけられません。そして明日は発表日です。第一次選抜的な?胃がパーンとなりそうなストレスとともに私は結果を待つばかり。
うひゃあ死ぬ。
それでは七月の始め頃に小ネタにしようと書いていたものです。異国パロで土沖、かな?
What can I do for you?
砂上の城で
果てしなく蒼い空の下、灰色の景色が広がっていた。
瓦礫に死体、血溜り。
そんな景色の中、探し人は瓦礫の山の上で空を見上げていた。硝煙で姿が霞む。
「総悟」
「・・・近藤さん」
近藤さんが名前を呼ぶと、無表情に少しの安堵を滲ませてそれは振り返った。
とてて、と瓦礫の山から降りて、それは近藤さんの胸に抱きついた。子犬が甘えるような仕草でじゃれて、近藤さんも嬉しそうに頭を撫でる。
そんな二人を横目に辺りを見回す。全て灰色だ。いつの間にか築かれていた砦もそこにいただろう人間も、皆一様にただの塊になってしまっている。足元を見れば瓦礫の下から銃を握った手が見えた。肌色に赤と、そこだけが鮮やかに見えてより生々しい。
総悟と呼ばれているそれが何なのか、俺も近藤さんも知らない。近藤さんが父親から受け継いだものだそうで、それから十年近く経った今も何かは分からないまま。ただ、人ではないのは確かだ。何百人もの人間を殺して、返り血一つ浴びていないのだから。
―――――妖精だよ、妖精!
昔、そう近藤さんが騒いでいたが妖精には見えない。妖精なら人を殺すだろうか。機械だというのなら、まだ分かるけれど。それでも十年前に比べて見た目がほんの少し成長していると思うから、それも違うのだろう。
明確な正体なんてなくても彼には居場所があるから、それでいいと放置して早十年。誰もそれに触れたりしない。
「帰るぞ、総悟」
「へい」
近藤さんに手を引かれ、嬉しそうにそれは城へと戻る。近藤さんはこの小さな国の王だ。自覚はないようだけれど。俺はその近衛隊長なのだが、この国の守り神と化した彼のお陰で仕事は殆どなく、秘書と呼ばれるのが正しいような、そんな仕事をしている。
「総悟、風呂入ったら一緒に飯食おうな」
「やった! じゃあ急いで入りやすね」
「トシは総悟のこと見ててやって。俺ちょっとお妙さんとこ行ってくる!」
「あいよ」
妙とは一応近藤さんのフィアンセで、十年間ストーカー紛いの求婚をし続け、漸く結婚前提のお付き合いを認められた。近藤さんにベタベタなそれも経緯を知っているから、近藤さんが自分を放って行ってしまっても文句をたれたりはしない。
とてもよくできたものだ。と他人のフリをしてみるとそう思う。
「近衛隊長さん」
「あんだよ」
「風呂入るんで、出てってくれやせんか」
「・・・今の時間、侍女もいねぇから俺が代わりにてめぇの世話しなきゃなんねぇんだよ」
これは、とても不器用だ。一人で風呂に入るのもままならず、飯の食い方も汚い。だから大抵は誰かが世話をしなければならないのだが、今日は誰にも告げていない。
俺が、世話したかったから。
そんなことを、誰かに告げたらどんな目で見られるだろうか。
渋々とそれは服を脱ぐ。今日の衣装は真っ白い、東の国の民族衣装のようなものだった。襟やスリットの入った裾に、赤いラインが刺繍されている。
それを脱いだ背中もまた白い。背骨の滑らかなラインや、尖った肩だとか。芸術品のようで、いくら眺めていても飽きない。
「近衛隊長さん」
「名前覚える気ねぇよな、おまえ」
「近藤さん以外はどうでもいいんで。・・・一人で入るから、本当にあんたはどっか行ってくだせぇ。俺が休んでる間は国を守るとか」
嫌味たらしく付け加えられた後半よりも前半の台詞が、ぐさっと胸に突き刺さった。多感な人間ではないから、そんな周知の事実を言われたところであぁそうかよと呆れるのが普通、なのに。
これはよくない傾向だ、早くなんとかしないと手遅れになる。
もう、手遅れかもしれないけれど。
「あの瓦礫の山を越えて攻め入るやつなんざいねぇよ。それこそ人間じゃねぇ」
「・・・そう思うなら、お好きなように」
「だから、腹の傷隠さなくてもいいんだけど。寧ろ見せろ」
「・・・知ってたんですかィ。アンタも人が悪いや」
頑なに此方を向かなかったそれが、此方を向く。黒い絹のズボンの上の白い横腹に、赤黒い血がついている。それの前に跪いて見ると、一筋の切り傷があった。対してでかく深いわけではないが、浅い傷でもなさそうだ。こんな傷を負っているくせに、よく無表情でいられる。
「前にも、怪我したことあんのか」
「今日が初めてでさ。・・・俺、もう駄目なのかなぁ」
染々と自分の怪我を見ながら他人事のように言う。
改めてこれはなんなんだろうと、真面目に思う。愛らしい面をした、若干人間味のあるロボットか。近藤さんになついているのだって、ペットが主人になついているようなものなのかもしれない。主人を慕うように、プログラムされているとか。
なんだか酷く、目の前のこれが可哀想になって、気付けばぺろ、と傷を舐めていた。
するとひぃ、と悲鳴を上げるものだから、その反応に気を良くする。
「な、なにしてんのアンタ!」
「舐めりゃ治るってよく言うだろ」
「だからって、ちょっと」
あわわ、と口をパクパクさせるのがおかしくておかしくて。ぺろぺろ舐めていれば本当に傷が塞がっていっているような気がした。
錯覚とはいつも甘いものだ。願いが、一瞬だけ自分の体を操って、体感させる。傷が早く治れば、なかったことになれば、こいつは今のまま、終わりを予期することなく近藤さんの傍にいられる。
俺よりも強くて、逆に瞬殺されてしまいそうだけれど、守りたいと思う。この愛しさは、なんだ?
「近衛隊長さん、」
「・・・」
「ひじかたさんっ!」
「なんだよ、ちゃんと名前覚えてんじゃねぇか」
顔を離して指で傷を辿る。息を飲んで微かに怯えてみせたのが堪らない。勘違いが飽和して、俺はこいつを好きなんじゃ、と真面目に思ってしまいそうだ。
錯覚ではなく本当に、傷口が浅くなっていて俺は実は凄かったのか、なんてふざけて考えてみる。
二人が、幸せにいられればいいと思う。でも、人を殺させて幸せになってほしいと願うのはそこはかとない矛盾だ。
漸く解放してやって、離れてやれば柳眉を寄せながらそれは背を向けてズボンを脱いだ。此方も同じく背を向けて待っていれば、脱ぎ終えたと肩を叩いてくる。
「近衛隊長さん」
「あんだよ」
タオルを腰に巻いたそれを視界に入れて、王族専用であるはずの浴場へ足を踏み入れる。王族専用とはいえども、この国の王は基本的に国民に優しいので、質素でありながらも威厳を感じられるような、そんな作りだ。
俺は入れてやったことしかないけれど、これはそんなことを気にせず堂々と入って、総悟専用な、と近藤さん手作りの椅子にちょこんと腰かける。
「ずっと今のままだったらいいのにって、思ったことはありやすか」
「・・・ずっと、そう思ってるよ」
お前に会ってから、十年来。
かけるぞ、言ってからシャワーで頭を濡らしてやっていれば、水音に紛れて俺もでさァと聞こえた。
これの願う、平穏の中に。俺が含まれているのならばそれだけでいい。
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