梅々
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パラレルワールド
- 2013/01/15 (Tue) |
- 日常 |
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1月15日は敵と手を組む日ときいて。
というのはいいわけで昨日お風呂で浮かんだネタ。
試験前だからネタが浮かぶんですね。
170cmの攻めと受け。
総悟、と優しく呼んでくれる声が好きだった。
笑った顔や笑い声が好きだった。
その温もりが好きだった。
頭を撫でる大きな掌が好きだった。
あの人さえいればどこへだってゆけた。
under the moon
珍しく夜更けに意識が浮上した沖田は、ばちっと音のしそうな勢いで瞼を開け、身動ぎもせずそのまま天井を見つめる。部屋はただ暗い。月明かりすらも入っていないようだ。
夢見が悪かった、というのは覚えている。その夢から逃避したくなったと同時に意識が浮上したのだ。夢の続きを見たくないからか、眠気は微塵もない。普段ならば朝まで目覚めることなく熟睡するのだが。
普段は気にならない低く唸るような音に意識が向く。ごおお、と床の遥か下から響くような音が、肌を小刻みに振動させているようで不快だった。なので寝床へ少しの名残惜しさも感じずに身を起こす。呼吸音も聞こえず温もりもなかったから分かっていたが、共に眠ったはずの男もいない。夜の空気でも吸いに行ったのだろうか。
ならばと、人肌が恋しい自覚はないままに、沖田は枕元にあった羽織と刀を手に立ち上がり、明かりも着けないまま真っ直ぐに部屋の外に出る。以前から夜目がきくほうだったが、近頃より一層、目が暗闇に順応するのが早くなった。夜型の生活になったからだろうか。
そんな風に詮無いことを考えながら外へ繋がる重い扉を押した。開いた扉の隙間から冷たい風が吹き込み沖田の指通りの良い髪を掻き回す。一歩踏み出せば柔らかな月明かりが白い肌を艶かしく照らした。
光の元へ出て漸く、暗闇からも逃げるようにしてここへ来たことに気づく。そんなにも恐ろしい夢を見たのだろうか。曖昧にすら覚えていない。
吹き上げる風に袂をはためかせながら歩を進めれば、探していた男が此方に背を向け紫煙を燻らせていた。ちょうど男の向こうに細い月が見える。この男には月がよく似合うと、沖田は常々思っている。彼のように包み込むような温もりを与えないくせに、手を伸ばしたくなる、存在。この男は誰の光を未練がましく反射しているのだろう。
「一人じゃ眠れなかったのか」
「……そういうときもありまさァ」
「珍しく素直じゃねぇか」
特徴のある笑い声だ。肩を震わせて笑ったあと、来いと、振り向いて沖田を呼ぶ。
月光に男の隻眼が剣呑な光を帯びる。綺麗だ、そう思いながら沖田は近付き男に手を伸ばす。
「高杉」
「どうした。そんな可愛い面しやがって」
伸ばした手を常に冷たい男のそれが掴み、乱暴にぐいと引き寄せられる。そのまま男の腕の中、沖田はほぅと安堵の息を吐いた。馴染んだ香と紫煙の混ざった匂いがする。どんな匂いよりも安心するのだが、同時につきりと針で心臓を刺したような痛みも伴う。
自分が置いてきた人を思い出すのだ。裏切ってはいない、ただ置いてきたと沖田は認識しているが置いていかれた側からすると裏切りなのかもしれない。だが最初から分かっていたことだ。沖田とその男が隣にいる理由なんて彼の存在以外になかった。
彼がいない今、繋ぎ止めるものは思い出ぐらいしかない。
「なぁ、俺が今、アンタに向かって刀を抜いたらどうする」
「応じるまでだ。どうせ今のおまえにゃ殺れねぇよ」
「なんででさァ」
確信に満ちた物言いが気になり、沖田は首筋に埋めていた顔を上げる。沖田を映したのは声の通りに自信に溢れ、尚且つ揶揄するように細められた瞳だった。
「あんだけヤったんだ、いくらお前の腕でもへっぴり腰じゃな」
「アンタも毎日毎日よく飽きやせんね」
此方へ来てから、ほぼ毎夜女扱いされている。そのうちに飽きるだろうと思っていたが、予想は外れ沖田まで快感を得るようになった。素質があったのだとすました顔をして満更でもなさそうにこの男は言っていたが、事実であるのかもしれない。
「すぐ飽きるようなもんはいらねぇ。……ほら、見てみろよ」
促されるまま振り返り、沖田は船の下に広がる夜景を眺めた。
きらきらと人工の明かりが夜空よりも煌めく。その中で二つほど突出して高い建物がある。それは数年前まで沖田が守っていたものだ。
ターミナルと、江戸の城。
江戸の町へ帰ってきたのだ。
沖田を同意の上で連れ去った高杉は、その足で春雨と会談があると宇宙へ出た。そこで沖田は知り合いの娘と似た、彼女と同じ夜兎族の少年と出会ったりもした。その後知らない星を転々とした後地球へ戻ったがあちこち連れられていて、馴染んだ町へ戻ることはなかった。
見た限りでは何も変わりはないけれど。
ここには真選組はあっても沖田がいたころのものはない。
大好きだった彼もいないのだ。
だから此処へ来た。
「昔の夢でも見たんだろう」
「……多分」
「さすがちやほや育てられただけはあるな」
「うるせぇ高杉」
「慰めてやるよ」
そう言ったのが聞こえたと同時に何かがからんと落ちた。両手が体をまさぐり始め、落ちたのは煙管だと知る。
ただやりたいだけであろうとも思うが、それなりに優しいのも知っている。
似ているとは思わないが、時々昔の上司を思い出してしまう。
「……寒いから戻ってからにしやしょうよ」
「お前がそういうなら」
でもいまはこの腕の中が心地好いのだ。壊したいものがある今。
高杉に寄り添ったまま部屋へと戻る、沖田の背後で軋んだ音をたて扉が閉じた。
というのはいいわけで昨日お風呂で浮かんだネタ。
試験前だからネタが浮かぶんですね。
170cmの攻めと受け。
総悟、と優しく呼んでくれる声が好きだった。
笑った顔や笑い声が好きだった。
その温もりが好きだった。
頭を撫でる大きな掌が好きだった。
あの人さえいればどこへだってゆけた。
under the moon
珍しく夜更けに意識が浮上した沖田は、ばちっと音のしそうな勢いで瞼を開け、身動ぎもせずそのまま天井を見つめる。部屋はただ暗い。月明かりすらも入っていないようだ。
夢見が悪かった、というのは覚えている。その夢から逃避したくなったと同時に意識が浮上したのだ。夢の続きを見たくないからか、眠気は微塵もない。普段ならば朝まで目覚めることなく熟睡するのだが。
普段は気にならない低く唸るような音に意識が向く。ごおお、と床の遥か下から響くような音が、肌を小刻みに振動させているようで不快だった。なので寝床へ少しの名残惜しさも感じずに身を起こす。呼吸音も聞こえず温もりもなかったから分かっていたが、共に眠ったはずの男もいない。夜の空気でも吸いに行ったのだろうか。
ならばと、人肌が恋しい自覚はないままに、沖田は枕元にあった羽織と刀を手に立ち上がり、明かりも着けないまま真っ直ぐに部屋の外に出る。以前から夜目がきくほうだったが、近頃より一層、目が暗闇に順応するのが早くなった。夜型の生活になったからだろうか。
そんな風に詮無いことを考えながら外へ繋がる重い扉を押した。開いた扉の隙間から冷たい風が吹き込み沖田の指通りの良い髪を掻き回す。一歩踏み出せば柔らかな月明かりが白い肌を艶かしく照らした。
光の元へ出て漸く、暗闇からも逃げるようにしてここへ来たことに気づく。そんなにも恐ろしい夢を見たのだろうか。曖昧にすら覚えていない。
吹き上げる風に袂をはためかせながら歩を進めれば、探していた男が此方に背を向け紫煙を燻らせていた。ちょうど男の向こうに細い月が見える。この男には月がよく似合うと、沖田は常々思っている。彼のように包み込むような温もりを与えないくせに、手を伸ばしたくなる、存在。この男は誰の光を未練がましく反射しているのだろう。
「一人じゃ眠れなかったのか」
「……そういうときもありまさァ」
「珍しく素直じゃねぇか」
特徴のある笑い声だ。肩を震わせて笑ったあと、来いと、振り向いて沖田を呼ぶ。
月光に男の隻眼が剣呑な光を帯びる。綺麗だ、そう思いながら沖田は近付き男に手を伸ばす。
「高杉」
「どうした。そんな可愛い面しやがって」
伸ばした手を常に冷たい男のそれが掴み、乱暴にぐいと引き寄せられる。そのまま男の腕の中、沖田はほぅと安堵の息を吐いた。馴染んだ香と紫煙の混ざった匂いがする。どんな匂いよりも安心するのだが、同時につきりと針で心臓を刺したような痛みも伴う。
自分が置いてきた人を思い出すのだ。裏切ってはいない、ただ置いてきたと沖田は認識しているが置いていかれた側からすると裏切りなのかもしれない。だが最初から分かっていたことだ。沖田とその男が隣にいる理由なんて彼の存在以外になかった。
彼がいない今、繋ぎ止めるものは思い出ぐらいしかない。
「なぁ、俺が今、アンタに向かって刀を抜いたらどうする」
「応じるまでだ。どうせ今のおまえにゃ殺れねぇよ」
「なんででさァ」
確信に満ちた物言いが気になり、沖田は首筋に埋めていた顔を上げる。沖田を映したのは声の通りに自信に溢れ、尚且つ揶揄するように細められた瞳だった。
「あんだけヤったんだ、いくらお前の腕でもへっぴり腰じゃな」
「アンタも毎日毎日よく飽きやせんね」
此方へ来てから、ほぼ毎夜女扱いされている。そのうちに飽きるだろうと思っていたが、予想は外れ沖田まで快感を得るようになった。素質があったのだとすました顔をして満更でもなさそうにこの男は言っていたが、事実であるのかもしれない。
「すぐ飽きるようなもんはいらねぇ。……ほら、見てみろよ」
促されるまま振り返り、沖田は船の下に広がる夜景を眺めた。
きらきらと人工の明かりが夜空よりも煌めく。その中で二つほど突出して高い建物がある。それは数年前まで沖田が守っていたものだ。
ターミナルと、江戸の城。
江戸の町へ帰ってきたのだ。
沖田を同意の上で連れ去った高杉は、その足で春雨と会談があると宇宙へ出た。そこで沖田は知り合いの娘と似た、彼女と同じ夜兎族の少年と出会ったりもした。その後知らない星を転々とした後地球へ戻ったがあちこち連れられていて、馴染んだ町へ戻ることはなかった。
見た限りでは何も変わりはないけれど。
ここには真選組はあっても沖田がいたころのものはない。
大好きだった彼もいないのだ。
だから此処へ来た。
「昔の夢でも見たんだろう」
「……多分」
「さすがちやほや育てられただけはあるな」
「うるせぇ高杉」
「慰めてやるよ」
そう言ったのが聞こえたと同時に何かがからんと落ちた。両手が体をまさぐり始め、落ちたのは煙管だと知る。
ただやりたいだけであろうとも思うが、それなりに優しいのも知っている。
似ているとは思わないが、時々昔の上司を思い出してしまう。
「……寒いから戻ってからにしやしょうよ」
「お前がそういうなら」
でもいまはこの腕の中が心地好いのだ。壊したいものがある今。
高杉に寄り添ったまま部屋へと戻る、沖田の背後で軋んだ音をたて扉が閉じた。