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梅々

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にっこにこ

れい様肆萬肆千打リクエストありがとうございます!!
沖土で「土方を庇って派手にけがする総悟と悶々とする乙女土方」です。
乙女を意識すると中々乙女にならないミステリー・・・。裏と呼べるか分からない裏です。
本当に、リクエスト&コメントありがとうございました!

















どうでもいいから

おまえがいてくれれば





眠れぬ子羊





売られた喧嘩は買うものだ、とそう昔から認識していて、武州にいた頃は血気盛んだった。喧嘩した回数なんて覚えてない。そんなだから総悟とも毎日のように喧嘩した。もしかしたら今でもそれは変わりがないかもしれない。
つい先刻から降りだした雪は深深と降り続くが、積もる気配はなくコンクリートが黒く濡れていく。周りも暗いから色が濃くなろうが見ることはできないけれど。

「真選組副長土方十四郎殿と見受け致す。一寸着いてきては頂けぬか」

「・・・殺してぇヤツに敬語使うたァ洒落た趣向だなァ」

見た目も口調も厳格な男が路地裏から語りかけてきた。その背後には若い攘夷浪士が二人。呼び出しを食らうことは最近少なかったのだが、きっとつい先日の討ち入り関係だろう。
幸か不幸か、一緒に見廻っている総悟はコンビニへ向かった。煙草を買ってくるついでに肉まんでも買ってくるのだろう、その間に片付ければいい。
男達について狭い路地へ入る。この先は空き地になっているから、そこで殺るつもりのようだ。
自分の力を過信したことはなかった。何より総悟という自分より強い奴がいたから、当然なのかもしれない。アイツがまだ俺よりも弱かったときも追い付かれないよう必死だった。女の所へ行くふりして河原で竹刀を振り回したり。多分、これは誰も知らないはず。
空き地へ着くなり男は振り返り、刀を抜いた。俺より若い男二人は突っ立ったままで、なんだか嫌な予感がする。

「では、参る」

「・・・」

斬りかかってきた男からは静かな怒りが伝わってくるが、若い二人の方はニヤニヤと笑っているだけでなにを考えているか分からない。とりあえず太刀を避けて怪しい二人組のほうにも注意しつつ刀を抜く。そのまま体勢を立て直し刀を構え突進してきた男へ向かい、切っ先を向ける。
すると、鈍い物音がした。

「っ!?」

「ハッ、ひっかかかったな狗め」

「ケホッ・・・煙玉か」

視界が灰色に包まれ、痛みに涙が生まれより見えづらい。ニヤついていた二人の片方が煙玉を地面に投げつけたらしい。昔喧嘩のときに敵に砂をぶっかけていたのを思い出す。卑怯な手だと、言うには使いすぎた方法だ。
近くに感じる気配は二つで、その両方が前方からだからまだましだと、潤み霞んだ視界で睨み付ける。けれどそれも一瞬だった。煙の中銀色に光ったもの。
刀ではない、けれど見慣れた武器。
これはやばいかもしれない。

「死ねッ!!」

「っ!」

「土方さんッ!!」

覚悟をして目を瞑った途端、聞こえた声。耳に馴染み尚且つ愛しいそれに続いて爆音がした。
ハッとして瞼を開ける。すると目の前で揺れる、ほの暗い金色。その手触りをよく知っていると、何か分かった途端にそれがぐらりと倒れた。

「っ総悟!!」

腕の中に抱いた体は血塗れで、いつもは真っ白い顔が血に染まっていて血の気がひいた。こんな怪我をした姿、見たことがない。力ない表情に思考が停止してしまっていると、徐に総悟が瞼を開けた。
穏やかな眼差しなんて向けられたことが嘗てなく、こいつはこのまま死んでしまうんじゃないか、と悪い方向へ考えてしまう。

「だから・・・アンタはバカなんでィ・・・・・・」

「そうっ・・・!」

ゆっくりと瞼が落ちた。同時に体の力まで抜けたのだろう、少し重くなった。だが呼吸しているからまだ大丈夫だと自身を落ち着ける。
敵は三人、まだピンピンしている。総悟は怪我を負ったというのに。俺を庇って。情けなさすぎて煙の効果が切れたというのに目が痛む。
いますべきは自己嫌悪ではなく、原因の抹殺。

「どうした副長殿? 仲間が死んで悲しいか?」

「安心しな。てめぇも同じところに逝かせてやるからよ!!」

「・・・ざんな。」

ヘラヘラ笑いながら刀を振り上げた奴を横薙ぎに払い、残った二人をさっさと片付ける。早く、総悟を病院に運ばなければ。一刻も、早く。
それだけが頭の中を占めていた。


**


全治三週間。大丈夫大丈夫、死にゃあしないよ。そうあの医者は言ったが。信じないわけではない。けれど罪悪感より疑心暗鬼になっている、ような。
あの後病室で見たのが最後でこの二週間総悟とは一切会っていない。顔の半分を覆う包帯に、負けないぐらい青白い顔。思い出したのは嘗て愛した、彼の姉。
俺さえしっかりしていたなら。総悟はあんな怪我を負わずに済んだ。もうこの手を離すまいと、そう思ったのに。ミツバが逝ったときそう誓い、総悟に監禁されたとき、この喪失感を二度と味わいたくないと、より強く誓ったというのに。
明日病院から帰ってくるらしく、近藤さんやら山崎やらが退院祝いを企画していた。だが初日にそれはきついんじゃないか、そう言って延期にさせた理由は総悟のためではなくて、未だ顔を会わせづらいからだ。礼を言って謝りたい、それと同時に不甲斐なさすぎて、会わせる顔がない。
全治三週間。隊長格以上の人間がそんな怪我を負ったことは無かった。それは皆打たれ強いというのもあるかもしれないが、そんな無茶をしなかったともとれる。俺はあのとき自分の力を過信した。結果的には勝てたが大きな犠牲を払った。こんな人間が副長の座についていていいのかとまで考えて、結局仕事は手につかず時間だけが徒に過ぎていく。
見限られるかもしれない、総悟に。そうなったら俺は、生きていけない。


**


「いいんですか? 本当に」

「いいんでィ。先生がいいっつったんだから。それよか、誰にも言ってねぇんだろうな?」

「勿論ですよ。俺だって隊長にさっき聞いたばかりなんですから」

「そっか」

それは好都合、と車を降りた。
最後に見た空は雪空で、しかもあの人は泣いていた。そんな最悪な情景が嘘のように晴れた、冬の夜空には星がチカチカしている。
最初の一週間は激痛のため、この一週間は一刻も早く退院したくて。トイレ以外ベッドから出なかったら先生がもう退院していいと告げた。予想以上に俺がおとなしかったらしい。確かに、病院嫌いの俺がこんなにおとなしいことはもうないと思う。

「・・・土方さんは?」

「ずっと籠ってます。・・・相当堪えたようですよ。本人は隠していますが」

「ああ、だろうなァ」

この二週間一度も、土方は見舞いに来なかった。それ以外の名前を知ってるやつは殆んど来たというのに。とっつぁんも含めて。だから、気に病んでいるであろうことは容易に想像できた。
繊細な人だから仕方ないのだけれど。
山崎とは玄関の前で別れ俺は庭を回り副長室へ向かう。誰よりも一番、会いたかったから。
案の定部屋にいるようで行灯の仄かな灯りが障子越しに見えた。草履を脱いで縁側を横切り、一気に開け放つ。

「っ!? そ、うご・・・?」

「ただいまでさァ、土方さん」

目を丸くした土方ににんまりと笑い、障子を後ろ手に閉じた。そのままずかずかと土方の前まで歩み寄り、至近距離から見つめてやる。
若干顔が窶れている。隈ができているし痩せたようだ。対する俺の方は何もなかったような顔をしているはずだ、顔にできた怪我は少しも残っていない。驚いていた土方も次第に遠慮がちに俺の顔を眺め回すようになった。そして戸惑いながら頬に触れてくるものだから、可愛くて文机に押し倒した。

「総悟・・・?」

「俺はもう元通りですから、気にしねぇでいいですぜ?」

「でもおまえ・・・っ」

「あんたを守れたんだからこれぐらいへでもねぇ。・・・教えてやりやしょうかィ? 傷全部治ったって、体で」

優しい声で耳に吹き込めば面白い程に顔が真っ赤になって首筋までも染まった。
いつまで経っても初なその反応が愛しくて、こんなにベタ惚れなことを知られたくないと真面目に思いながら唇を重ねた。


**


一週間早く総悟が帰ってきてそのまま押し倒された。
触り方も意地の悪い言葉も何も変わっていなくて、悩んでいたことが馬鹿みたいになった。触られただけで何もかも吹っ飛ぶなんざ、と自分に呆れてしまいそうになるがそんな暇さえ総悟はくれない。会えなかった日々を埋めるような強さと激しさで攻められて、全て溶かされる。
ただ一つ、気になったのは。もろに食らったのか未だに包帯の巻かれた脇腹。それ以外の怪我は痕も残さず完治しているがそこだけは、がっちり包帯が巻かれていて痛々しい。謝罪の気持ちもこめてそこを撫でると、フッと総悟が笑った。
繋がったまま一向に動く気配のないそこが、びくりと反応してしまう。

「名誉の勲章だと思いやせんか?」

「っばか、だろっ・・・ぁ、」

「馬鹿ならあんただ。みみっちいこと気にして会いにきやしないんだから。女扱いされてるうちに考え方まで女になっちまったんで?」

「ちがっ・・・あぁっ、あ、んっ・・・!」

「せっかく病院でシてみようと思ったのにねィ・・・」

「いぁっ! んんっ、や、っあ!」

一つになった場所が異様に熱い。思えば一週間以上されなかったことなんて今までなくて、興奮が最高潮に達しているのかもしれない。
それは、総悟も同じようで。
突き上げは初めから激しく、明日きついだろうというほど奥まで勢いよく突かれてどろっどろの性器をぐちゃぐちゃに揉みしだかれる。
しがみついた背に爪をたて腰を振り身悶えれば、耳元に淫乱と吹き込まれてそれがまた快楽に繋がった。

「ひぃぃっ・・・、ぃくっ、も・・・っあぁ・・・! そうごっ、そうごぉ・・・っひぁんっ!!!」

「っとに・・・可愛い人だァ、あんたは・・・っ!」

絶頂の悲鳴は口づけに埋もれ、二週間以上のブランクが感覚をより一層研ぎ澄まし、中に出される生々しい刺激にも小刻みに体が震える。
すごい体に躾られたものだと思うが、それを嬉しく思う俺も俺を愛おしむ総悟も狂っているにちがいない。

「もう馬鹿なことはしねぇでくだせェよ。それと、肉まんと餡まん食い損ねたんでちゃんと買いなせェ」

「・・・悪かったな」

「いえいえ。お互い様でィ」

ニッと笑った顔の男らしさに、久々に訪れた眠気は吹き飛び、厄介なものがぶり返した。
今夜もこいつのせいで安眠できそうにない。

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